トレンディーだった頃

5月 24, 2021

田村正和追悼特集でドラマの再放送をリクエストできるとしたら…。

『古畑任三郎』でもなければ、『ニューヨーク恋物語』でもない。『パパはニュースキャスター』でもなければ、時代劇などはほとんど見たことがない。『敵同志好き同志』である。志穂美悦子である。イッセー尾形である。ついでに柳葉敏郎である。佳那晃子もいい。松村達雄もいい。水野久美の迫力もなかなか。財前直見もかわいい。後に園子温の『冷たい熱帯魚』でその存在感を見せつけることになるでんでんも田所完一名義で脇を固めていた。重ねて言うが、志穂美悦子がとにかく良かった。見どころばかりで隙間がないほどだ。当時社会問題化していた地上げをストーリーの軸にしながら、恐ろしくオーソドックスなラブコメだった。確かに若い女性客が必要以上に多い銭湯のエキストラはPC上問題がある。大いにある。それ以外にもいろいろアレな場面やセリフがあったりするが、それでもこのドラマの田村正和が僕にとってはベストであることに変わりない。ただ、忘れてならないのは、このドラマを盛り上げた最大の功労者は角松敏生であるということだ。中山美穂のプロデュースで成功を収める直前、当時最先端のR&Bサウンドをニューヨークから直輸入したかのような主題歌"THIS IS MY TRUTH〜SHININ’ STAR〜"は、80’sシティポップの到達点である。金字塔である。角松敏生がいなければ、おそらくダンス☆マンもいなかっただろう。ダンス☆マンがいなければ、モーニング娘。のメガヒットもなかったかもしれないし、そうなればその後のアイドル文化はかなり違ったものになったかもしれない。が、そんなことはどうでもいい。ここでは『敵同志好き同志』が何拍子も揃った凄まじいドラマだったということをとにかく強調しておきたい。Wikipediaを見ると「ベタすぎる展開が続き、やや面白みに欠けた」などと書いてある。これだから集合知などあてにならない。間違いなく田村正和の、そしてトレンディードラマの最高傑作である。